無理に明るく振舞っている様子は微塵も感じなかった。

飲みながら先輩は突然、離婚したって言った。

それで良かったんだと言う先輩。

俺たち夫婦は微妙に困惑した。

女房は女房でどう思ったかはわからないけど、あんまり先輩が明るくさらりと言ってのけたので、 なのか、プッと吹き出しやがった。

先輩もつられてゲラゲラ笑い出した。

俺もなんだかわからいまま可笑しくなって笑った。

泣き笑いだった。

お前の嫁さんはいいよなぁとしみじみ先輩がつぶやいた。

俺が調子に乗って「こいつのどこがいいんですか」

と言うと、「普通なとこ」

だと言った。

「どーせ、平凡な主婦ですよ」

と女房が言い、また笑い出した。

酔っ払うと女房はなんでも笑う癖があった。

さんざん飲んだところで俺たちは順番に風呂に入った。

女房が入ってる間、俺と先輩は黙って酒を飲んでいた。

2人きりになると妙に口が重くなった。

先輩の期待を叶えてやるべきなんだろうなと色々考えていると、会話すら思いつかなくなっていた。

でも決心はついていた。

「これを最後にしよう」

と思っていた…。

女房が洗いたての髪を拭きながら戻ってきた。

パジャマ姿でも平気なのはほろ酔い気分からなのだろう。

前開きのボタンとボタンの間から、時折素肌が見える。

飲みなおしに乾杯したときに、女房の乳房の揺れ具合がわかった。

ノーブラだ。

俺の視線に気付いたのか、暫くは左腕で胸を隠すようにしていた。

バカ話もネタがつきたころ、頃合を見計らって俺は席を立った。

黙っていく俺に女房は声をかけなった。

俺にはあのときから、ずっと考えていたことがあった。

女房が狂おしく悶える様子を見てみたいという欲求と見てしまったあとの気持ちを推し測っていたのだ。

見てはならないとブレーキをかけ続けてきた。

しかし一方で見たいという邪な心がどんどん膨らんでいった。

これが最後と思う気持ちが俺を思い切らせた。

俺は寝室でそのときを待つことにした。

鼓動が聞こえるほど興奮していた。

我が家なのになぜか忍び足で二人のいる部屋へむかった。

抜き足差し足忍び足、ガキの頃よくそういってつま先だって歩いたものだ。

夜も更けて辺りは深閑としている。

俺はダイニングを出るときに不完全に閉めて出たのに、完全にドアは閉まっていた。

少しの隙間を得るためにも、ガチャリと音がなる可能性が高かった。

物音に気付かれたらどうしようとかなり迷った。

迷った挙句、なんで俺がビビッてるんだ?!開けちまえよ!という悪魔の囁きに負けてしまった。

俺はドアノブに手をかけてゆっくりと下げた。

「カチっ」

と小さな音がした。

心臓が口から飛び出しそうになる。

ドアの隙間からダイニング内の音が一気に洩れ出てきた。

俺がビビるまでもなく、かなりの音量でテレビが鳴っていたのだ。

二人が掛けているはずのテーブルに2人の足が見えるはずだった。

普通に飲んでいればだが、、。

俺の予想に違わず普通に飲んではいなかったわけだ。

吸いかけのタバコがそのまま煙を上げており、2人が席を外して間もない状況を察知した。

何よりあやしい雰囲気がダイニング中に充満している。

俺はそのドアの向こうで立ち上がり、あきらめて帰ろうとした。

しかし、次の瞬間、テーブルの向こうの光景が目に入った。

完全に固まってしまう俺。

想像して硬くなっていたモノは縮み上がり、手足に無用な力が入る。

先輩が膝を折り、小柄な女房にすがりつくような形でちょうど胸の辺りに顔を埋めていた。

女房はその先輩の頭を抱えるようにしている。

マザコン?!なんだか母親に甘える大きな男のように見えてしかたなかった。

はっきりとは聞き取れないが先輩が何かを言っているらしく、女房はそれをなだめる様な仕草をしていた。

見た事のないパターンに呆然とする俺。

先輩の性癖を見てしまったことに後ろめたさを感じながらも、 気付かれることもなさそうなので、もうしばらく見守ることにした。

先輩はやおら立ち上がると今度は女房を抱きすくめた。

ぎこちない抱き方だが、先輩は強引に顔を近づける。

女房のあごが上がり、口を吸われている。

強烈に舌を入れられながら、荒々しく胸をまさぐられている。

胸元はみるみるはだける。

白い乳房を直に揉まれて、女房の首の辺りはすっかり赤みを帯びていた。

やがて女房は崩れるように床に横たわり、先輩が覆いかぶさる。

俺は思わずしゃがみこんで、二人を追った。

テーブルの下でもつれ合うように二人は動いていた。

見慣れたはずの妻の裸体に異常なまでに興奮していた。

女房の苦しそうな息が、短い叫びに変わったのは、先輩が股間の茂みに顔を埋めたときだった。

先輩は茂みの中心をざらついた舌先で舐め上げ、伸ばした手で乳首を摘んでいた。

女房がたまらず膝を立てると、先輩は顔を上げて両膝をぐいっと押し拡げた。

舌先で器用に剥き出されたクリトリスを、今度は容赦なく指で刺激した。

短い叫び声は矯正に変わった。

命じられるまま、女房はうつぶせになって尻だけを高く突き出した。

小さな割れ目に指を2本、3本挿しいれられられると、あろうことか女房は尻を振って応えている。

先輩はガチャガチャと慌てたようすでベルトを外し、パンツをずりさげた。

いきり立ったイチモツが後ろから女房に突き入れられる瞬間、俺は悪寒のような身震いをした。

脳が痺れ、全身の血液が逆流しているようだ。

全く別の世界に迷い込んでしまったような浮遊感。

あとは本当にただ呆然と一部始終を脳裏に焼き付けていった。

女房の喘ぎ声も、先輩の背中に浮かんだ玉のような汗も、二人の荒い息の交差も、そして最後の放擲まで。

先輩が背中を丸くして、ティッシュで処理しているところで俺は静かにドアを閉めた。

翌朝、俺は二人の顔をまともに見ることができなかった。

女房は先輩に2度も抱かれたわけで、しかも2度目はそれを見てしまった。

暗黙の了解があったにせよ、胸が締め付けられた。

女房はメガネをかけて朝食の準備をしていた。

普段はさらにノーメイクなわけだが。

そんな女房のメガネ姿を先輩が褒めた。

先輩の目には恋愛の情が浮かんでいる。

女房も微笑みかけたが、一瞬、ビクンとして眉山を寄せた。

女房の体調を先輩は気遣ったが、女房は大丈夫だといい、朝食の準備を続けた。

俺は新聞を広げて聞かない振りをしていた。

先輩がうちを出て行くまで何度か女房はビクンと体を揺らした。

先輩は怪訝な顔をしていた。

俺は気にしない振りをしていた。

もう3人の微妙なバランスは完全に崩れていた。

俺は昨夜みていた事を女房に告げた。

もう一度シャワーを浴びた言い訳を途中でさえぎられて、女房は絶句した。

俺は女房を責めはしなかった。

ただ、出来心なのか本気なのかだけを質した。

女房は本気ではないと言って、ひたすら許しを乞うた。

俺は条件をつけた。

女房はしぶしぶ条件を飲んだ。

翌朝、女房の股間にリモコンバイブを埋め、俺のポケットには発信機があった。

恋愛感情なんて、物騒なものを先輩に持たれては困るし、女房にも自覚を持たせるためだった。

俺たちは先輩を空港まで送って行った。

電波で女房が縛られているとは知らないまま、先輩は機上の人となった。